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理事長コラム


外部被曝線量と内部被曝線量の合算
加藤和明
2014年04月15日

 東電の福島第一原子力発電所では、過酷事故発生後、国が急遽変更した緊急時の管理基準に従って、作業者等の放射線被曝線量の管理を行っていたが、2012年12月23日に首相が“毀損原子炉の異常状態収束”の宣言を行ったことに合わせて、放射線管理の基準も平時のものに戻されたという。現在は、敷地内の全域を管理区域とし、年20mSvを目標、それを超えてしまった者については5年間100mSvを目標に、作業管理が行われているようである。

 外部被曝線量の測定結果がある値を超えた者に対しては、体内に取り込まれた放射性物質(実質的に放射性セシウムのみ)の量を測定などにより評価している。内部被曝の線量評価は手間暇がかかり、機材や専門家の不足もあって、測定対象の選択をトリアージュの視点でおこなっているのである。

 最近、内部被曝線量を加算した結果、管理目標を超えるものが続出(?)し、担当者と組織が困っている、という報道を目にした。平時の内部被曝線量は、将来にわたる長期間の積分線量を預託線量と称して単年度の被曝と見做して帳簿上処理をしていいことに定められている。これは帳簿付けの業務負担軽減にための方便として公的に認められたものであるが、今の1Fを取り巻く“内外の状況”の下では、内部被曝線量の加算は、手間はかかっても単年ごとの実線量で行う方が理に適っていると言わざるを得ない。プロやエキスパートやスペシャリストの名がつけられている放射線管理屋も居る筈なのに、このような現象がいとも安易に起こりうることに戦慄を覚える。
(2014年04月26日 改訂)


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