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理事長コラム


放射性セシウムの食品含有新基準について
加藤和明
2012年02月25日

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会は、昨24日、表記に関し、穀類や肉、魚、野菜などの「一般食品」は100Bq/kg,粉ミルクやベビーフードなどの「乳児用食品」と「牛乳」は50Bq/kg,「飲料水」は10Bq/kgを妥当とする答申を小宮山大臣に提出し、大臣は4月1日から適用させるとのことである。

 これまでの暫定基準値は年5mSvを念頭に決められていたが、これを年1mSvに引き下げてつくり直したものである。

 今朝の新聞報道(例えば産経新聞)をみると、世論は賛否に分かれているようである。

 参考までに、放射性セシウムについて国が初めて定めた“管理基準”(昭和35年9月30日に制定され翌日から施行となった科学技術庁告示第22号)を紹介して置く。

  密封状態100μc{⇒3.7MBq}
  “c”は放射能の当時の単位キューリの当時の記号
  非密封状態総量1μc{⇒37kBq}
  濃度2nc/g{⇒74Bq/g=74kBq/kg}
  “自然に賦存するもの”の濃度10nc/g{⇒370Bq/g=370kBq/kg}

 これらの数量を超えるものが、いうならば「法定放射性同位元素」であった。

 そして、“自然に賦存するもの”の中には、広島・長崎の原爆起因のもの(昭和20年=1945年からCs-137の半減期である30年の1/2に相当する15年しか経過していなかった)や米ソ等の核実験起因の放射性降下物も含まれていたと解される。

 国の制度設計としては、特定の放射線源である「法定放射線源」起因の被曝のみが管理の対象であったといえる。

<2012/02/27追記>

 原子力安全・保安庁が2011/08/26に発表したところによると、広島原発で放出されたセシウム137の量は89TBq、1F事故で1〜3号炉から大気中に放出された放射性セシウムの総量は1.5PBqとのことである。因みに、P(ペタ)はT(テラ)の1,000倍である。

 また、現行法令における“法定放射線源”の規定に関わる“下限数量”は放射性セシウムの場合、総量=10kBq;濃度=10kBq/kg(=10Bq/g)とされており、Cs-137については“Ba-137mと放射平衡にあること”が想定されている。

2012年02月25日
追記:2012年02月27日



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