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理事長コラム


                              
 本資料は、本日(2月22日)東京・青山で開催された「(NPO) ニュークリア・サロン」の2月例会に招かれて行った講演の resumeです。 ご参考までに掲載させて戴きます。
加藤和明


原子力災害と放射線防護
加藤和明
2012年02月22日

【3.11直後に考えたこととその後の推移を見て思うこと】
RP(放射線防護)の要諦は“システムの設計と運用”に在る! → 3.11はシステムを“破壊”:設計の前提が崩れ、使用概念の規定やシステム組み立ての論理からシステムには適用限界が存在 → “システムの再構築”が必要・不可欠に!(RPに係る国の制度設計のみに非ず):行為・判断の当否や記述命題の正誤は須らく前提に依存する! → 関係法令の“邪魔な規定”の存在と“必要な取り決め(法令)”の不存が問題 → “非常事態宣言”の必要性を痛感/国力の現状(社会各層にみられる学力低下と国の危機管理能力の実態)/行動の指導原理が「保身と力(チカラ・パワー)の増強」/現役東大教授(東洋文化研究所)が「東大話法」(=自己の信念ではなく、自分の立場に合せた思考を採用する)を批判[安富歩:「原発危機と東大話法」] → 「日本はひょっとすると“茹蛙”に?」との思いに!(丁度1年前の今日NZで大地震に被災した19歳サッカー少年の決断(右脚を捨てるか命を捨てるかの二者択一)を思い起こすべし)

【RPに係る国の制度設計as of 3.11の要点】

  • “原子力の傘”の下に:2012/04/01以降は所管が「環境省」に!
  • 規制対象は“放射線の使用”そのものではなく“特定放射線源の使用”
  • ICRPの勧告に準拠:1957-58当時の状況(障害は防止可能なもの;制御可能な被曝に限定=自然、戦争、事故・災害、起因の放射線被曝は管理の対象から除外)
  • 被曝の分類:職業/環境/医療
  • 国民線量の値と内訳:別紙参照←本コラムでは省略

【“分業と特化”の視点で見たNS(原子力安全)とRP(放射線防護)の比較】
  1. NS=“ND(大事故・災害)を起こさないことを目指した研究と実践”vs RP=“NDは起きないことを前提とした研究と実践” → “安全神話”の呪縛と“受け身のRP”(「RPの三原則」) → NSとRPにおける“リスク”概念の意味合い(受け止め方)の違い/Vent排気系へのfilter取り付け/等.

  2. “記録的”と“想定外”:今冬の“記録的大雪”(100年に1度;死者3桁)と“東日本大震災”(1000年に1度;死者4桁)/海外で予測のハズレや不作為で起訴・有罪判決も!
【今そして今後、我々は何を為すべきか?:課題解決にもtriageが必要!】
  1. 喫緊の課題:“茹蛙”化の阻止{「放射線被曝は“theless, thebetter”」の是正(文科省の小中高副読本と厚労省の除染電離則)/ICRPのALARA → 食品の含有放射能規制強化やNIMBY(瓦礫処理や沖縄問題など)の蔓延は国を滅ぼす! → “天災”=“想定不可”=“不可抗力”の領域(運命と宿命の境界)をどのように定めるべきか? → 「安全と安心」を(枕詞として使うのではなく)真面目に考えるべし!

  2. 災いを転じて福に! → NSとRPの調和を図り『世界標準となる新しいシステム』を創り出すことが望ましく思われる。(破綻RPシステムの繕いに政府がこの1年間に行ってきたこと*は全てが“対症療法的”にして“その場凌ぎ的”であり、“全体としての調和を著しく損ねる”ものであったと考える。[*「事故起因放射性物質」「追加線量」「職業的被曝」「除染事業者」「除染電離則」「各種管理基準or目標値の導入」「“毎時0.23μSv以下”なら“年1mSv以下”との論理」、など]
2012年02月22日



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