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全福島県民を対象に行うという健康診断と放射線影響の調査について
加藤和明
2011年06月25日 |
昨6月24日の東京新聞(他の新聞でも報じられていたが筆者が目にした中では東京新聞が1面に載せた6段記事が最も詳細であった)によると、政府は、1,000億円規模の基金を新たにつくり、全福島県民(200万人)を対象に、1F原発事故による放射線被曝の影響を今後30年間実施する方針を決めたとのことである。そのため、政府は今年度の第2次補正予算案に780億円を計上し、東京電力にも250億円の拠出を求めるとのことである。
1999年9月30日に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故では、時の政府は、推定被曝実効線量が1ミリシーベルトを超えた者に、言ってみれば「放射線被曝者」のレッテルを貼り、国費で健康診断を行うことを決め、茨城県に実施を委託した。県はそれに応えて、2000年以降毎年当該者(及び希望する住民等)に“健康診断”を実施しているが、その内容は(希望者に対する“心の病”の相談を除けば)通常の住民検診と、実質的に変わりがないことない、といってよい。
此の4月にも今年度分の検診が予定されていたが1F事故の勃発で、予定していたMDの調達が不能となり延期された状態に在る。3.11以降“1mSv”のもつ意味合いについての国民の意識が大きく変化したともみられることから、このJCO被曝者検診と1F被曝福島県民検診とどのように折り合いをつけて行くことになるのか、いやでも関心を持たざるを得ない。
JCO事故の際にも、放射線影響の専門家の中に、広島・長崎の原爆被災生存者に対する疫学調査に倣って、影響の調査をするべきであると政府(文部省)に進言した方が居られ、当時の文部省は科学研究費の枠から急遽1億円(程度であったと記憶しているが)を捻出し、その実施に県も協力したのであったが、住民の側に「そういう検査をするということは自分たちに知らされていない重篤な影響が起こるかも知れないことか」と疑念を抱かせ、依頼した研究者の方は“個人情報秘匿”の壁に邪魔されて、折角集めて貰った“試料”を活用できず、高額の“低温・防菌保管庫”で相当時間保管された揚句全て廃棄処分されたように仄聞している。実際には、低線量についてのリスク係数を疫学的に有意なデータを得る状況になかったので、計画の実施にgoの判定をした者の判断力に問題があったといわざるを得ないのであるが、表記の調査において同じような失敗を繰り返すことのないよう希望して止まない。
全福島県民を対象に健康診断と影響調査を1,000億円投じて30年間続ける、というのであれば、事前にJCOのときの実例を徹底的に検証するべきである。
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2011年06月25日
修正:2012年02月27日 |
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