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原燃鉱山
加藤和明
2010年10月15日 |
GDPを急増させている中国が、己の経済力up をよいことに、国際法と史実を無視して一方的に行っている(と聞かされている)“魚釣島など尖閣列島についての領有”の宣言と運動を、Super-Power
アメリカの弱体化と日本の軟弱外交につけこむように、最近強化している。今回の唐突な「レアアース対日輸出禁止」通達は、領海侵犯を犯した中国漁船が日本の警備艇に“公務妨害”し、現行犯逮捕された中国漁船の船長を奪還すべく行ったと思われても仕方のないタイミングで行われた。中国政府にとっては、まるで赤子のように見えるであろう、この国の政府は、案の定、言うべきことの一つも言わないまま、そして何より起訴もしないまま、船長を釈放し、それでレアアースの対日輸出禁止も解かれるところとなったが、図らずもその結果、「レアアースやレアメタルが国家の命運を左右する重要物質であるにも拘らず、国内には殆ど資源がない」という事実と「日本が中国の属国である(ように見える?)のは今に始まったことではない」という官房長官の考え(国会答弁)が広く世の中に知れわたるところとなった。
一方で、国を争うように通貨の切り下げ競争が起き、電話など携帯電子機器の普及に伴う需要が急増もあって、金の価格が急上昇を続けている。連動性の高い銀や白金についても同様である。世の中のこのような状況を反映して、十和田湖に近いところにある秋田県小坂町が「都市鉱山」の町として往年活気を取り戻しているらしい。ここには同和鉱業(現・DOWAグループ)の所有する鉱山があり、明治・大正の頃から、銅・銀・金などを掘り出していたのだが、平成6年に閉山となり、町はさびれるばかりであった。バブルの頃を含めて、この国が工業製品に使うことで溜め込んできた、これら貴金属や希少金属(レアメタル)が、今、産業廃棄物やその“予備軍”として、結果的に貴重な“鉱物資源”となり、ハイテクともいえる精錬技術と設備が残っていた小坂を、“都市鉱山”として生き返らせたという訳である。産経新聞(2010年10月14日)の受け売りであるが、回収された携帯電話1万台から200~300グラムの金を精製できるそうで、小坂では現在、年間に、金を6トン、銀を400トン、銅を1万トン回収しているという。つくば市にある物質・材料研究機構によると、わが国の都市鉱山としての資源量は、世界有数の資源国に相当するのだそうで、例えば、金は世界埋蔵量の約16%(約6,800トン)、銀は同じく約22%(6万トン)を占め、世界のトップクラスに相当する。
小坂町からそれほど遠くない青森県六ヶ所村には、ご存知の日本原燃という会社があり、原子力発電所から出てくる「使用済核燃料」から燃え残りのウランやプルトニウムを取り出して新しい“核燃料”に仕上げる仕事をしている。実は、燃料として再使用しない“残り物”には、ルテニウム、ロジウム、パラジウムなどの世の中における希少な金属が豊富に含まれているのだが、これらは“放射性廃棄物”の名で括られ、資源として活用することなく廃棄処分されることになっていると聞く。素人考えかもしれないが、なんとももったいない気がする。この方面の専門家である藤井靖彦先生(東京工業大学名誉教授)にお聞きしたところでは、使用済み燃料1トン中に、ルテニウムなどの貴金属が3キログラムあり、年間800トンの燃料を処理すると2.4トンの貴金属が回収できるそうである。
DOWAグループと日本原燃の協力を前提に、国策として、これら“原子力資源”の活用を検討してみても良いのではなかろうか。 |
(2010年10月20日改定) |
上で「船長を釈放し、それでレアアースの対日輸出禁止も解かれるところとなった」と書いたが、最近の報道によると、当時の政府発表は「希望的観測」による誤報だったようで、今日に至るまで対日禁輸は続いているそうである。 |
(2010年10月28日追記) |
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