RSF 放射線安全フォーラム 本文へジャンプ
理事長コラム


Pig と Pork
加藤和明
2010年09月14日

 この国では、“食品に放射線を照射すること”が、厚生労働省所管の法令で禁止されている。一方で、発芽防止を目的に“馬鈴薯に(ある種の)放射線を照射すること”が行われている。多分、法的論理では、「“馬鈴薯”は農産物であって食品ではない」ということなのであろう。英語で豚と豚肉を表記のように使い分けているように、pigや馬鈴薯は農水省、porkやポテトは厚労省、の受け持ちということのようである。落花生・南京豆・ピーナッツの場合は何処で線が引かれるのであろうか?因みに、農水省の“分類”では、{林檎・蜜柑・桃・バナナ・等}は“果物”、{苺・西瓜・等}は“野菜”ということになるらしい。

 縦割り行政は、不合理な線引き(例えば、@.“放射性同位元素”として放射線障害防止法が所掌しているAm-241と“核燃料物質”として原子炉等規制法が所掌しているTh-232;A.規制対象とする特定放射線源の指定に係る“除外”“免除”“解除”基準の設定・運用;B.“放射性廃棄物”と“放射性廃棄物でない廃棄物”;等々)や不合理な多重規制や制度設計上の看過できない瑕疵;などを生んでいる。

 文部科学省所管の放射線審議会が「放射線業務従事者に対する特殊健康診断の廃止」を求めても、原子力委員会が「食品に対する放射線照射禁止は不合理なものゆえ見直しを」と求めても、所管の行政は意に介さないようである。

 つい今しがた、民主党の代表を選ぶ選挙が行われ、菅代表が再選を果たされた。実際上の首相選出選挙である。2週間の選挙期間中、どちらの候補であったか、「縦割り行政の弊害を打破したい」といった趣旨の発言をされていたのが耳に残っている。民主党政権の舵取りに期待したいものである。



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