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理事長コラム


外部被曝と内部被曝の管理法
加藤和明
2010年04月28日

 放射線が人体(の健康)に及ぼす好ましくない影響を調べたり、その知見を基に影響の発現を制御する術を考察する際、その因果関係を記述する“原因の量”として“線量”が導入され使用されてきたことは先に述べたことである。

 そして基本的線量として“エネルギー吸収密度”で定義される「吸収線量」が採用され、放射線防護の分野では、その分野に特化した“加重線量”(「等価線量」や「実効線量」)や“加重線量モドキ”(「1cm線量当量」や「70μm線量当量」など)が使用されている。

 放射線が身体の外から入射して受ける被曝を「外部被曝」、元々身体の構成要素として体内にある天然の放射性同位体や何らかの理由で摂取されて体内に留まっている放射線同位体が発する放射線により、身体の内部から受ける被曝を「内部被曝」と呼ぶ。

 影響の評価や因果関係の探求には、原因の量として共通の測度「線量」を用いることになり、実際そのように扱われてきたが、安全管理のための“制御量”としては、外部被曝の場合は身体に入り込む“放射線の量”、内部被曝の場合には“放射性同位体の(身体への)摂取量”が実用に適しており、実際そのような手法で管理されるのが普通である。

 放射線防護の体系を、外部被曝、内部被曝の区別なく統一的に理解した知見に基づいて、統一的に行うことは、Simple is best. の哲学を好む物理学者の体質を持った者には好ましく思われるのだが、放射性同位体の摂取量(単位Bq)と線量(単位GyまたはSv)との間に複雑な換算関係が横たわっており、これがために、未来に係る予測であれ、過去に遡っての推測であれ、線量の評価やそれに基づく影響の評価の品質は、一般に外部被曝の場合に比較して格段に劣ることになる。今日世界で広く使われている放射線防護の体系は周知のようにICRPが創出し勧告するものであるが、その体系つくりに当たっては様々の割り切りが必要で、そのそれぞれで、持ち合わせている知識の量や質に応じた“安全係数”が乗じられている。つまり、内部被曝の管理については、外部被曝の管理手法に比較してさらに大きな安全係数が掛けられているといってもよい世に思われる。

 得られる情報の不確実性と予測の不確実性(外部被曝は一過性であることが多いのに対し、内部被曝は一般に長期間継続する)から、人々は同一量の線量であっても内部被曝の方により怖さを覚える人が多いし、安全管理の実務に携わる者にとっても、“線量”を仲介しての管理にはより多大の労苦を必要としている。

 筆者は、“線量”を介しての統一的放射線管理の手法は、この際取り止め、外部被曝の管理には“放射線の量”、内部被曝の管理には“放射性同位体の摂取量”を“原因の量”として影響の知見を整え、同じくそれを安全管理のための“制御量”として用いるシステムに代える方が良いと考える。

 線量は空間的微分量として定義されており、空間的には積分量であることの多い影響記述の原因の量としては、そもそも本質的に困難なものである。現在の体系では、線量評価を臓器ごとの平均値を用いるように定められているが、この手法は、透過性の高い放射線が対象となる外部被曝では適応を得ることが多いとしても、透過性が極めて低い放射線が対象となることの多い内部被曝では適応を得ないケースが多いのである。筆者の主張の本質的な立脚点はここに存するのである。



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