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暫定基準の見直しはいつ行われるべきか
加藤和明
2010年04月26日 |
1973-1977年度道路整備五カ年計画の財源不足を補う目的で、1974年に2年間の“暫定措置”としてガソリンの高率臨時税が設けられたが、2010年の現在に至るも未だ廃止されていない。現政権与党は“即時(?)廃止”をマニフェスト(公約)に入れて衆議院選挙に勝利したが、財源不足(道路建設を重視)を理由に廃止を先送り(?)してしまった。
日露戦争(や日清戦争)の戦費調達を目的に導入した煙草と塩の専売制も、その役割をとうに果たしたと思われてからも長いこと続けられて(煙草専売法は1904年(明治37年)から1985年(昭和60年)まで、塩専売法は1905年(明治38年)から1997年(平成09年)まで存在)いたのであるから、この国の民には、“用語”の概念規定や法運用の“論理”の適用に、さして厳密さを要求しないという鷹揚なところがあるようである。
1986年にチェルノブイリ原発の事故が起きた時、環境に放出された放射性物質により汚染された食品の輸入を禁止するための“判定基準”を370Bq/kg
と定めた。この基準値は、ICRPが“一般人に対する年限度”として勧告していた1mSvをベースに、一般的日本人の摂取経路をモデル化し、摂取率などに安全率を見込んで定めたもので、“暫定的”という形容詞がつけられていた。
当時のICRP放射線防護システムは、原子力の大事故や災害は起こさないことを前提につくられていて、職業人や一般人に対する被曝管理の基準適用には、自然放射線や医療を受けるに際して受ける放射線や事故・災害に起因する放射線への被曝は対象としていなかった。従って、取りあえず流用した形のこの管理基準値に“暫定”の形容詞を付したのは、ある意味で当然のことなのであるが、放射線防護に係る国の制度設計の土台を検討することをさぼり続けて、相変わらず“暫定”のままにしておくというのは望ましいことではないと憂えるものである。
上記の暫定基準に基づいて、ある生協が1999年12月10日に定めたという“残留放射能含有食品の摂取に係る暫定自主基準”を見たことがあるが、そこでは、脱脂粉乳
3kg、牛乳15kg、米・野菜 6kg、肉25kg、魚介40kg、調味料100kg となっていた。因みに、上記暫定基準は、Cs134とCs137という2種類の放射性同位体についての合算値に対するものとして示されているのであるが、このことを覚えている人は、今日、非常に少ないように思われる。
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