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理事長コラム


この国が“滅びの道”を歩み出している一つの証
加藤和明
2010年02月09日

 電子版毎日新聞(2月4日02:31発信)によると、経産省・原子力安全保安院は、我が国の原子力発電所作業員の1基当たりの総被曝線量(集団線量)が欧米に比べて高いとして、被曝低減対策の強化に乗り出す方針を固め、労働環境や作業方法の改善を関係業界に求めることを2月3日に決めたそうである。

 今朝 02:35発信の同新聞によると、これを受けて東京電力は、検討チームを設けて抜本対策に乗り出す方針を8日明らかにしたという。

 こういう方針を決めたお役所も酷いものだが、唯々諾々と従う世界最大の電力会社TEPCOにも、さらにはこういったニュースに何の疑問も呈さずそのまま国民に伝えるマスコミにも呆れかえる。

 日本のデータが、欧米のそれより高いのは、原発の定期検査を欧米より、よくいえば肌理細かく、悪く言えば、適切と思われる頻度以上で行うことを、行政が求めているからである。

 そして何より、国民線量(国民が、様々の放射線源から1年間に受ける実効線量の総量を、人口で除したもの)に対する原発の寄与が、我が国では1%より遥かに低い水準にあるという事実に目を向けていないのが問題である。

 お役所がこのような方針を決めると、各電力会社は“ワースト・ワン”の汚名を排そうと、数値の低減化に励むことになる。昨今話題となっている“牛丼屋の値下げ競争”と同じである。両者とも、結果として、国益を大きく損ねることになることをどうして、“高級官僚”も、日本の代表的企業である世界最大の電力会社の経営者も、主要紙の一つに数えられる新聞社のデスクも、気がつかないのであろうか?

以上



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